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 イネには茎を伸ばすアクセル役の遺伝子とそれを抑えるブレーキ役の遺伝子があり、両方のバランスによって生育が制御されていると、名古屋大などの研究チームが発表した。この仕組みは、小麦やサトウキビなどイネ科に共通するとみられる。収量を維持しながら水害に強い穀物の開発などにつながる可能性がある。

 日本のイネ(ジャポニカ米)は茎の丈が1メートルほどだが、雨期に洪水が起きる東南アジアには6メートルほどにもなる「浮きイネ」というイネがある。茎が伸びるには植物ホルモン「ジベレリン」が影響するとされているものの、日本のイネの若い時期にジベレリンを与えても茎が伸びなかった。

 名大の永井啓祐助教(植物分子遺伝学)らが日本のイネと浮きイネの遺伝子を比べると、「ACE1」と「DEC1」という遺伝子が違っていた。ACE1は茎を伸ばすアクセル役、DEC1はそれを抑制するブレーキ役だという。

 日本のイネはACE1が壊れているが、成熟期にACE1に似た遺伝子が働き、ジベレリンの働きとともに茎を伸ばすことが判明。DEC1の働きは、イネの成長とともに解除されていた。浮きイネでは、若い時期からACE1とジベレリンによってDEC1の抑制が解除され、茎がどんどん伸びていたという。

 国内の栽培状況では、茎が伸びすぎると風などで倒れて収量が落ちてしまう。日本のイネはすべてACE1が壊れていて、背丈が伸びないものだけを選んで育てられてきたと考えられるという。名大の芦苅基行教授(植物分子遺伝学)は「国内のイネだけを調べていても分からず、浮きイネとの比較で明らかになった。イネの『多様性』によって、茎の伸びの仕組みという『普遍性』が示せた」と話している。

 科学誌ネイチャーに論文(https://www.nature.com/articles/s41586-020-2501-8別ウインドウで開きます)が掲載された。(木村俊介)