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 (10日、甲子園交流試合 花咲徳栄3-1大分商)

 開幕試合に登場した大分商は、地元の独自大会で初戦敗退した悔しさを胸に、この日の交流試合に臨んだ。「目標の150キロは出せなかったけど、高校3年間の最後に甲子園で完投できてうれしかった」。エースの川瀬堅斗投手(3年)は言った。

 「大商で甲子園」が目標だった。小学生だった2013年、大分商が夏の甲子園に出場。兄の晃さん(22)=福岡ソフトバンクホークス内野手=も1年生ながらベンチ入りした。晃さんは3年で主将も務めた。

 川瀬投手自身は1年の夏、2年の夏とも、地方大会で敗れた。新チームでは志願して主将になり、精神的にも成長。昨秋の九州大会では初戦から3試合を完投し、念願の甲子園切符をつかんだ。

 だが、選抜大会が中止に。折れそうな心を支えたのは、晃さんの「キャプテンは常に前を向け」という言葉だったという。

 この夏の独自大会で、川瀬投手は「大分で頂点に立って甲子園へ」と意気込んで臨んだ。初戦はけがもあってベンチでのスタート。五回から救援に立ったが、打線が巻き返せず、まさかの初戦負けだった。仲間はみんな、呆然(ぼうぜん)としていた。

 川瀬投手は思った。「甲子園に出られない他のチームのためにも、全力を尽くそう」。独自大会で最速148キロを記録した自身の目標として、「甲子園で150キロ」も見据えた。

 迎えたこの日の交流試合。一回に3点を奪われた。それでも仲間が「川瀬のために点をとろう」と声をかけあう姿に気持ちを切り替え、直球勝負した。六回2死二塁、142キロの直球で三振を奪うとマウンドで拳をにぎって、ほえた。「今日一番いい球を投げた喜びと、これでチームに流れが来るという思いで、うれしかった」

 全8回、149球。甲子園の舞台で、球数制限ぎりぎりの熱投だった。

 甲子園はどんなところだったか。そう問うと、川瀬投手は答えた。「無観客でも、雰囲気が違う。どの球場よりもすごいところだった」(寿柳聡)